もくじ
アレルギーとは
日本人の約4人に1人は花粉症に悩んでいるといわれています。花粉症は、スギ、ヒノキ、ブタクサ、カモガヤなど植物の花粉が原因となって、くしゃみ、鼻水、鼻閉、目のかゆみなどを引き起こします。例年の中部地方のスギ花粉のピークは2月下旬から3月頃で、その後にはヒノキの花粉症の時期がやってきます。両方にアレルギーのある方はゴールデンウィーク過ぎまでつらい症状に悩まされることになります。
また、通年性アレルギー性鼻炎と言われる、くしゃみ、鼻水、鼻づまりなどのアレルギー症状が、季節を問わずあらわれる方もいます。通年性アレルギー性鼻炎の主な原因(アレルゲン)は、ダニ、真菌(カビ)、昆虫、ペットの毛などが知られています。
アレルギーの症状
主な症状は、くしゃみ、鼻水、鼻詰まりですが、目の痒み、皮膚のただれなど、様々な症状を引き起こします。
また、思考力が低下し、学業・仕事・家事などに支障をきたしたり、睡眠の質の悪化によるだるさ、イライラなどもきたします。
アレルギーの検査
問診にて、アレルギーの原因はおおよそ見当がつきます。食物や花粉、ハウスダストなどによるアレルギーは、IgEと呼ばれる抗体(アレルゲンを攻撃するたんぱく質)によって引き起こされます。そのため、アレルギーの可能性を評価する目的で血中IgE抗体の数値を調べる検査を行います。
当院では、同時に39項目測定できるView39という検査も行なっております。3割負担の方で5,000円程度で施行できます。しかし、よく誤解されていますが、検査は原因を特定する力はありません。あくまでその可能性を評価するまでです。
アレルギーの治療
1月下旬頃からの花粉が飛散する前から内服を始めるのが、うまくシーズンを乗り切るコツです。一般的に処方される、アレグラ、アレロック、ザイザル、タリオン、ナゾネックス、アラミストなどの西洋薬に加え、漢方薬、点鼻薬、目薬など個々に合った薬を組み合わせて治療を行っていきます。また、当院ではアレルギー症状を緩和する注射での治療も行なっております。
近年、スギ花粉症、ダニアレルギーの根本的治療が期待できる薬が認可され、当院でも処方ができるようになりました。ただし、アレルギー症状が強く出ることがあるため、スギ花粉の飛散期には治療は始められません。年によって変動しますが、ゴールデンウィーク明け~1月初旬ころまでの非飛散期に内服を開始します。
ダニアレルギーの治療は通年で行なっておりますので、ご相談ください。
スギ花粉舌下免疫療法
スギ花粉によるアレルギー性鼻炎を改善する、シダキュアという薬があります。アレルギーの原因となるアレルゲンを少量から、繰り返して服用して体を慣らしていくことで、スギ花粉によるアレルギー性鼻炎の症状を和らげます。アレルギー症状の有無にかかわらず、数年間にわたり、毎日継続して服用する必要があります。
治療の前には、採血にてスギ花粉によるアレルギー性鼻炎の確定診断が必要です。
効果 | すべての患者さんに効果があるわけではありませんが、長期にわたり正しく治療を続けると、アレルギー症状を治したり、症状の緩和が期待できます。くしゃみ、鼻水、鼻づまり、の改善、アレルギー治療薬の減量、涙目・目のかゆみの緩和、QOL(生活の質)の向上が見込まれます。 |
内服方法 | 1日1回、治療薬を舌下(舌の裏)に内服します。まずは少量を1週間内服し、その後は決まった量を数年間にわたり内服します。 初めて服用する際は、副作用が起こらないか確認するため医師の監督のもと投与を行い、2日目からは自宅で服用します。服用する前後は、激しい運動、飲酒、入浴を避ける必要があります。 治療開始時期の目安は、スギ花粉が飛散していない5月~1月初旬頃です。 |
服用できない方 | ・アレルギー性鼻炎の原因となるアレルゲンがスギ花粉ではない方 ・このお薬でショックを起こした ことのある方 ・重い気管支喘息のある方 ・悪性腫瘍(がん)や、免疫系の病気がある方 |
非特異的免疫療法(保険適用)
当院では、ヒスタグロビン皮下注射による非特異的免疫療法に積極的に取り組んでいます。この注射は、アレルギー反応により体内で生成されるヒスタミンをブロックすることで効果を発揮します。花粉症のほか、アトピー性皮膚炎、慢性蕁麻疹などにも効果があります。ノイロトロピンを同時接種するとさらに効果的です。今まで、アレルギーを抑える薬の内服などでも十分な効果を得られなかった方も、ぜひ当院にご相談ください。
ダニアレルゲン免疫療法
ダニによるアレルギー性鼻炎を改善する、アシテア、ミティキュアという薬があります。アレルギーの原因となるアレルゲンを少量から、繰り返して服用して体を慣らしていくことで、ダニによるアレルギー性鼻炎の症状を和らげます。治療の前には、採血にてダニ抗原によるアレルギー性鼻炎の確定診断が必要です。
アレルギー症状の有無にかかわらず、数年間にわたり、毎日継続して服用する必要があります。
効果 | スギ花粉症の治療と同様に、すべての患者さんに効果があるわけではありませんが、長期にわたり正しく治療を続けると、アレルギー症状を治したり、症状の緩和が期待できます。くしゃみ、鼻水、鼻づまり、の改善、アレルギー治療薬の減量、涙目・目のかゆみの緩和、QOL(生活の質)の向上が見込まれます。 |
内服方法 | 最初は少量の投与にて体を慣らし、その後は決まった量を数年間にわたり内服します。初めての服用の時には、医師の監督のもと行う必要があります。服用する前後は、激しい運動、飲酒、入浴を避ける必要があります。 |
服用できない方 | ・アレルギー性鼻炎の原因となるアレルゲンがダニではない方 ・このお薬でショックを起こしたことのある方 ・重い気管支喘息のある方 ・悪性腫瘍(がん)や 免疫系の病気がある方 |
費用
初回は検査などを含めて3割負担の場合、5,000円程度です。
その後の定期的な通院の費用は、他の治療や薬の処方がない場合には、当院での診療と調剤薬局での薬代と合わせて1ヵ月あたり3,000円から4,000円程度の負担となります。
よくあるご質問
舌下免疫療法と薬物療法(対処療法)は、どんな違いがありますか?
薬物療法(対症療法)は、症状を起こす物質(ヒスタミンなど)の働きや鼻の中の炎症をおさえて症状を和らげます。
アレルゲン免疫療法は、からだをアレルゲンに慣らして、症状を和らげたり、根本的な体質改善が期待できる治療法です。スギ花粉症の場合はスギ花粉を、ダニアレルギー性鼻炎ではダニのアレルゲンを含む治療薬を用います。
どれくらいの期間治療するのですか?
少しずつアレルゲン(スギ花粉やダニ)を投与し、からだをアレルゲン(スギ花粉やダニ)に慣らすことからはじめ、数年にわたり継続して服用します(3年以上推奨)。過度なアレルギー反応が出ていないかなどを診ていくため、定期的な受診が重要です。
スギ花粉症と、ダニアレルギー両方の治療をしたいのですが、可能ですか?
*シダキュアとミティキュアの開始時期を4週間以上開ければ、可能であるとされています。当院でも、同時治療されている方はいらっしゃいます。
日本耳鼻咽喉科免疫アレルギー学会 鼻アレルギー診療ガイドライン―通年性鼻炎と花粉症―2024年版(改訂第10版)金原出版株式会社 4)舌下免疫療法(SLIT)の実施法⑩ P65
免疫舌下療法で副作用がでることはありますか?
口の中の浮腫(むくみ)、腫れ、かゆみ、不快感、異常感、唇の腫れ、喉(のど)の刺激感、不快感、耳のかゆみ、などがあげられます。稀ですが、重篤な副作用としてショック・アナフィラキシーがありますので初回の内服は、必ず院内にてしていただき全身状態に変化がないか診させていただきます。
どのくらいの方が、スギ花粉の舌下免疫療法の効果がありますか?
*過去の研究では、正しく舌下免疫療法をおこなった患者さんの8割が花粉症の改善を自覚しています。スギ花粉症は自然によくなることが少ない病気ですが、アレルゲン舌下免疫療法は症状の改善が見込める治療方法です。
*Enhanced clinical effects of cedarcure® tablets of sublingual immunotherapy over the years of treatment and the impact of outcome by combined use of mite sublingual immunotherapy (dual slit) for japanese cedar pollinosis, Atsushi Yuta et al.,japanese journal of allergology
何歳から治療ができますか?
対象年齢は5歳からとなっていますが、実際には毎日お薬を舌下(舌の裏)に1~2分含んでいなければならないため、5歳のお子さまでは難しいことが多く、小学校に入学してから治療を行う方が多いです。
治療中の病気がありますが、舌下免疫療法の治療はできますか?
以下の方は治療にあたり相談が必要です。
・気管支喘息をお持ちの方
・65歳以上の方
・妊娠中や授乳中、妊娠希望の方
・悪性腫瘍(がん)や免疫系の病気をお持ちの方
・重い心臓病がある方